「ムーミン谷の仲間たち」は、他のムーミンシリーズとはちょっと様子が違い、脇役のキャラクターたちにスポットを当てた、短編小説集です。
9つの短編小説の中には、ムーミン(ムーミントロール)が登場する話もありますが、まったく登場しない話もあります。
トーベ・ヤンソンさんが書いたムーミンシリーズ、特に小説の方は「本当に幸せなものとは何か」といった、哲学的な内容がちりばめられていて、子どもだけでなく、大人も考えさせられるないようになっています。
特に「ムーミン谷の仲間たち」はその要素が強く表れていて、とにかく奥が深い!
教訓というと堅苦しいですが、人生経験豊富な大人にこそ、じんわり、しんみり、そしてほっこりと心に染み込んでくる、そんな話が詰まっています。
以下、あらすじを少しだけご紹介します。
1.ムーミン谷の仲間たち「春のしらべ」のあらすじ
冬の間、ムーミン谷を離れて南を旅していたスナフキン。春の訪れを感じ、ムーミン谷に戻る途中、名前のない「はい虫」と出会います。
スナフキンは、もう少しで春の歌が完成するところでした。ムーミントロールがこの歌を聞いて、喜んでくれる姿を思い浮かべて幸せな気持ちになっていたのですが、名前のない「はい虫」の登場ですっかりそのしらべが思いつかなくなったのです。
尊敬するスナフキンに出会って興奮する「はい虫」、歌の完成を邪魔されて不機嫌なスナフキン。
相反する反応の二人。どういった展開になるのでしょうか・・・?
この回では、スナフキンの有名な名言「あんまりおまえさんが誰かを崇拝したら、ほんとうの自由はえられないんだぜ」が出てきますよ。
※スナフキンの名言は、【完全保存版】スナフキンの名言集 深い!心に染み入る言葉50選読んでみてくださいね。
2.ムーミン谷の仲間たち「ぞっとする話」のあらすじ
子どもの専売特許ともいうべき、想像力。
ホムサはこの想像力を働かせることがとても得意で、現実の世界と想像の世界を自由に行き来します。
ある日、弟が蛇に食べられた!と両親に報告し、慌てた両親が確認すると弟は庭で遊んでいました。それはホムサの想像の世界での話だったのですが、両親はそれを理解できず「嘘はやめなさい」と怒られてしまいます。
ウソをついたと怒られたホムサは家を飛び出し、リトルミイと出会いますが、そこでまたホムサの想像の世界がさく裂!
しかしそこはリトルミイ。ミイがとった行動でホムサは・・・。
空想の世界と現実の世界を行き来する子ども(ホムサ)の様子が、とてもよく描写されていますよ。
3.ムーミン谷の仲間たち「この世の終わりにおびえるフィリフヨンカ」のあらすじ
フィリフヨンカは、昔おばあさんが住んでいたという、海のそばの「ただ大きいだけで、きれいではない家」に引っ越しました。
フィリフヨンカは、大きな災害が来るのではないかという得体のしれない恐怖を抱えていましたが、この不安や恐怖は、お茶をしに来たガフサ夫人に理解されることはありませんでした。
その夜、フィリフヨンカが恐れていたものだったのか、ものすごく大きな嵐がやってきて、彼女はこの世の終わりが来たと感じます。
この嵐は、フィリフヨンカが大事にしている「細々としたキレイなもの」や家財道具をすべて持ち去ってしまいます。
全てを失ったフィリフヨンカは、何を感じ、何を思うのでしょうか?
常識や伝統、義務に支配されていたフィリフヨンカの変化に注目です!
4.ムーミン谷の仲間たち「世界でいちばん さいごの竜」のあらすじ
ムーミンが池で偶然小さな竜を捕まえて、家に持って帰ります。
ムーミンは自分のペットにしようと思いますが、竜が懐いたのは親友のスナフキンだけで、他の誰にも懐きません。
自分が見つけた素晴らしいペットなのに、自分には懐かず噛まれる始末。しかもスナフキンのそばを片時も離れようとしない竜を見て、複雑な気持ちになります。
ムーミンは竜を飼うことを諦めて、スナフキンのところに行くように解放してやりますが、ムーミントロールの気持ちがわかっているスナフキンが取った行動とは・・・?
スナフキンの、ムーミントロールに対する友情が感じられるストーリーです。
ムーミン谷の仲間たち新装版 (講談社文庫) [ トーベ・ヤンソン ]
5.ムーミン谷の仲間たち「しずかなのがすきなヘムレンさん」のあらすじ
ヘムル族が経営している遊園地で、入場券にはさみを入れる仕事をしているちょっと若いヘムレンさんは(ムーミン谷に棲んでいるヘムレンさんではありません)、早く年を取って老人年金で静かに暮らしたいと思っています。
ある時、8週間も続く長雨で遊園地がすっかり壊れてしまい、ヘムレンさんは仕事を失います。
これをきっかけに、「今後は自分の好きなことに時間を使って、静かなところで一人ぼっちで暮らしたい」と親族に伝え、もう使われていない、おばあさんの大きな公園をもらいました。
ここはヘムレンさんの望む、墓場のように静かな場所だったのです。
すっかりこの場所が気にいったヘムレンさんですが、子どものホムサがやってきて、遊園地がなくなった悲しみを訴えます。
これを聞いたヘムレンさんは・・・。
一人ぼっちで静かに暮らしたいという、ヘムレンさんの願いは叶うのでしょうか?
6.ムーミン谷の仲間たち「目に見えない子」のあらすじ
養ってもらっているおばさんから皮肉を言われ続け、姿が見えない透明人間になっていしまったニンニ。
そんなニンニを哀れに思ったおしゃまさんは、彼女をまた見えるようにしてほしいと言って、ムーミン一家に預けます。
心に傷を負ったニンニは、話すことも、笑ったり泣いたり怒ったりといった感情を出すこともしません。姿が見えないニンニの場所を知るには、首に着けられた鈴だけ。
しかしニンニは、暖かく接してくれるムーミン一家によって、少しずつ心の傷が癒されていきます。
ニンニは元の姿に戻るのでしょうか?
この話は「ムーミン谷の仲間たち」の中でも、とても考えさせられるストーリーになっています。自分の存在を否定するようないじめによって、透明人間になったニンニ。
この話の中でのリトルミイとムーミンママの名言を紹介します。
・リトルミイ
「それがあんたのわるいとこよ。たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません。」
・ムーミンママ
「きっとこの子は、しばらくのあいだ、見えなくなっていたいと思ったのよ。」
※リトルミイの名言は、リトルミイ本物の名言12選!女は強し!世の中を蹴散らして生きる!を読んでくださいね。
7.ムーミン谷の仲間たち「ニョロニョロのひみつ」のあらすじ
ニョロニョロのひみつはムーミンパパが主役で、ムーミンパパから見たニョロニョロの秘密が描かれています。
以前からニョロニョロに興味を持っていたムーミンパパは、ある日、自由と冒険を求めて家を飛び出し、ニョロニョロと一緒にボートに乗って旅に出ることになります。
謎に包まれていたニョロニョロと一緒に旅をするうちに、ムーミンパパは彼らの行動の意味を知ることになります。
いったいニョロニョロの行動には、どんな意味があるのでしょうか?
※ニョロニョロのどこよりも詳しい生態については、ムーミンのニョロニョロの正体は怖い?名前の意味は?秘密の行動も公開!を読んでみてくださいね。
8.ムーミン谷の仲間たち「スニフとセドリックのこと」のあらすじ
スニフは物欲が強く、物を所有することが大好き!気にいったものを手放すなんてありえません。
そんなスニフが、ムーミントロールの「自分が本当に好きなモノを人にやったら、それが10倍にもなってかえってくる」という言葉を受けて、とても大事にしていた犬のぬいぐるみ「セドリック」を、ガフサ夫人のむすめにあげてしまいます。
スニフは大事なものを手放す代わりに、もっとステキなものが手に入ると思ったのです。
これが間違いだと知って落ち込んでいるスニフに、スナフキンが「いつかスニフに聞かせてやろう」と思っていた、スナフキンのおばさんの話をします。
スニフと同じようにキレイなものばかりを集めていたおばさんの話を聞いたスニフ。でも、スナフキンの考えとはうらはらに、スニフが思ったことは・・・。
スニフの、ものに執着する性格がよく描かれています。でも最後はちょっと見直しますけどね☆
※スニフについては、ムーミンのスニフは重要な役割があった!わがままだけど憎めないキャラクターを読んでみてくださいね。
9.ムーミン谷の仲間たち「もみの木」のあらすじ
ムーミン一家はいつも冬の間は冬眠しているので、クリスマスを知りません。
ある年のクリスマスの前日、ムーミン屋敷のみんなはヘムルさんにたたき起こされます。「クリスマスがくるじゃないか!君たちのねぼうにはまったくいやになっちまうな!」このヘムルさんの言葉で、ムーミン達はクリスマスとは何かを考えます。
クリスマスを知らないムーミンたち。ムーミン一家が考えたクリスマスとは?
思いもよらない行動と発言に、おもわず吹き出してしまいますよ。
ムーミン谷の仲間たち新装版 (講談社文庫) [ トーベ・ヤンソン ]
さいごに
どれも短編小説ですが、とても読み応えがあり楽しいエピソードばかりです。
もしかすると、ムーミンシリーズの中で一番面白い小説かもしれません。
これを読むと、いままで漠然としていたキャラクターのイメージも「こんなキャラクターだったんだ!」と新しい発見があったり、「う~ん」と考えさせられる話もあり、短編小説ながらとても奥が深いです。
ずいぶん前にかかれた小説ですが、昔も今も人間の悩みや不安は変わらないんだなと感じます。
大人のあなたに、ぜひ読んでみて欲しい1冊です。ぜひ手に取ってみてくださいね!
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