ムーミン小説シリーズ「ムーミン谷の彗星」は、あなたがイメージしているムーミンとは一味も二味も違うストーリーになっています。
いや、そもそもアニメでしかムーミンを知らない人が原作のムーミン童話を読むと、かなり衝撃を受けるでしょう(笑)
原作ムーミン小説は、ファンタジックなイメージのアニメとは違い、なかなかシュールな挿絵と内容になっています。
それでも基本的には、ムーミン一家やムーミン谷の住人をメインとした、穏やかな生活の中でのちょっとした出来事やちょっぴり危険な冒険などが描かれた、平和でほんわかした作品です。
ですが!
この「ムーミン谷の彗星」は、平穏・平和・安定といったものとは真逆の世界。
怖い・暗い・恐ろしい・恐怖・異様といった表現がしっくりくる、なんとも不気味な作風になっています。そんな中でも、どこか安心を覚えさせてくれるのは、おとぼけで個性的なムーミンキャラクターのおかげ。
ムーミンシリーズの中でも、他とは一線を画した「ムーミン谷の彗星」のあらすじをご紹介します。
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?あらすじ
ある大雨の夜、自宅が雨に流されたジャコウネズミがムーミン屋敷にやってきます。そんなジャコウネズミから発せられた言葉は、危険な星のせいで地球が滅びるという驚愕の話!
これを聞いたムーミンとスニフは、さあ大変!大パニックになります。
2人の頭は地球が滅びることでいっぱいになり、不安で不安で仕方ありません。
そんな子供たちを見たムーミンママは、おさびし山にある天文台へ行って、その危険な星について調べてくるように提案。
ムーミンママを安心させるため、2人の天文台への旅が始まります。
天文台への旅の途中では、ムーミントロールの大親友となるスナフキンとの出会いもあります。スナフキンは、この「ムーミン谷の彗星」で初登場です。
また、スノークやスノークのおじょうさん(アニメではノンノンやフローレン)との初めての出会いも、この「ムーミン谷の彗星」です。
危険な旅の末、おさびし山の天文台にたどり着いたムーミンたちは、学者たちから、彗星が地球へ衝突するのは間違いないこと、そして衝突するまであと4日しかないことを聞きます。
ムーミンたちは助かるのか?またムーミン谷の運命はいかに?!
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?主な登場人物
ムーミン谷の彗星の主な登場人物は、下記のとおりです。
・ムーミントロール
・ムーミンママ
・ムーミンパパ
・スニフ
・スナフキン
・スノークのおじょうさん
・スノーク
・ヘムル
・じゃこうねずみ
先程も少し触れましたが、「ムーミン谷の彗星」ではスナフキン・スノーク・スノークのおじょうさん(アニメではノンノン・フローレン)が初登場します。
リトルミイはまだ登場していません。
この物語の中でキーポイントとなる人物は、ジャコウネズミでしょう!
この偏屈でネガティブで、素直でない、自称「哲学者」のじゃこうねずみ。
このじゃこうねずみから「地球が滅びる」ということを聞かなければ、ムーミンたちは天文台に行くこともなかったし、スナフキン・スノーク達とも出会うこともなかったし、もしかすると彗星の衝突で命を落としていたかもしれません。
そういった意味では、じゃこうねずみはこの物語のキーマンですね!
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?グロテスクでリアルな描写
この作品で特に注目したいのが、リアルな描写。
なんてったって、彗星が地球に衝突するんですよ。
「ディープ・インパクト」です!「アルマゲドン」です!
ブルース・ウィルスのような、勇敢で絶対的なヒーローによって地球が救われた!
・・・・なんてことは、ムーミンの世界ではありません。
彗星が地球に衝突するという、「地球滅亡の危機」が描かれたストーリー。
絶望的です。
赤い彗星(ガンダムのシャーみたい(≧▽≦))が近づくにつれ、空が真っ赤に染まったり、空気中にりんの臭いがしたり、黒い雨が降ったり、海が全部干上がってあらわになり、グロテスクな海底が見られるようになったり。
また、何万といったイナゴの大群が大きな森を食い尽くす描写や、我先にと避難する住人の様子など、そういった描写が、子供だましの表現ではなく、実にリアルに描かれています。
子供に読み聞かせたら「怖い~!」と言われそうですが、自然のリアルすぎる描写と、荒廃していく世界の描写に、引き込まれること間違いありません。
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?ムーミンたちの冒険
天文台への旅と天文台からムーミン谷に戻る旅の中で、ムーミンたちはいろいろな恐ろしい目に合います。
中でも、ムーミン谷に戻る途中、スノークのおじょうさんが虫を食べる恐ろしい植物「アンゴラスツーラ」に捕まり、今まさに食べられる寸前!
そこにムーミンが、危機一髪でスノークのおじょうさんを救い出します。
ナイフを持ち、アンゴラスツーラをめっためったに切る、切る、切りまくる!(笑)
この事件がきっかけで、スノークのおじょうさんは、命を助けてくれたムーミンと仲良くなります♪
また、干上がった海を渡るのに竹馬を使ったり、海の底に沈んていた難破船の中でタコに襲われそうになったり、さまざまな危険な目に合いながら、ムーミンたちはママとパパ達に危険を知らせるため、急いでムーミン谷に戻ります。
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?ムーミンたちは、やっぱりムーミン
そんな暗い・重苦しい空気が漂うストーリーですが、ムーミンたちはあくまでマイペース。
少しは焦っている様子もありますが、基本的にはそう変わりません。
中でも「ザ・マイペース」なのは、ムーミンママ。
ムーミン谷の住人が、ムーミン谷に彗星が衝突する!というので一目散に避難している中、しょうがのクッキーを焼いたり、ムーミントロールの為に大きなケーキを焼いているんです。
いやいや、彗星が衝突だよ?!逃げようよ!と突っ込みどころ満載ですが、そこがムーミンママの寛大でたくましくすばらしいところでしょう。
お母さんの鏡ですね!
他にも、スノークのおじょうさんのスッとぼけた行動や、スナフキンの器の小ささなども、暗く恐ろしいストーリーを和ませてくれる大事な役割になっています。
ムーミン谷の彗星は都市伝説の元ネタ?結末
彗星が衝突する当日、ムーミン一家はスニフが見つけていた洞窟に避難します。
またここでも、ムーミンママがマイペースぶりを発揮。
スノークが大事なものだけを持って行くようにと指示したにもかかわらず、デコレーションケーキや、バラ、揚げくには湯船まで持ってくる始末・・・。
どんな時でも自分らしさを忘れないというのは、素晴らしいことですね!(^^;)
彗星が衝突するまでの息を飲む描写、そして彗星衝突の瞬間の描写は、手に汗にぎる展開!
結論をいうと、さいごは彗星は地球に衝突せず、地球をかすめてどこかへ行ってしまいます。
そして彗星が去った後、干上がっていた海が戻り、魚たちは海の中で踊り喜び、そしていつもの朝を迎えるところで終わります。
スナフキンの名言
「ムーミン谷の彗星」の中で、スナフキンの名言が多くあります。
■ぼくが、ここに住んでるうちはね。自分で、キレイだと思うものは、なんでもぼくのものさ。その気になれば、世界中でもな
■そうだな。なんでも自分のものにして、持ってかえろうとすると、むずかしいものなんだよ。ぼくは、見るだけにしてるんだ。そして、立ち去る時には、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、カバンを持ち歩くよりも、ずっとたのしいね
■それはいいテントだが、人間は、物に執着せぬようにしなきゃな。
■ぼくたちは本能に従って歩くのがいいんだ。ぼくは、磁石なんか信用したことがないね。磁石は、方角に対する人間の自然な感覚をくるわせるだけさ
■ありがとう、でも、今も考えたんだけど、持ち物をふやすというのは、ほんとにおそろしいことですね
■こまかいことをいうなよ。そのぐらいのちがいなら、ぼくたちの計算では、合っているというんだ
■人間も、みんなにこわがられるようになると、あんなに、ひとりぼっちになってしまうのさ
スナフキンの名言についてはこちらもどうぞ
⇒スナフキンの名言50選!見逃すな!行きづらい人へのヒント<完全保存版>
ムーミン都市伝説の元ネタだった!?
ムーミンには都市伝説と言われるものがあります。
ムーミンは核戦争の話だ!核戦争で人類が滅びた後の話だ!スナフキンは元軍人で、戦争で亡くなった友人たちを弔うために旅をしているんだ!
というような内容ですが、この話はたぶん、「ムーミン谷の彗星」からきているのではないでしょうか。
彗星の衝突や地球の滅亡、襲いかかる恐怖や不安など、たしかに戦争を思い起こさせる内容でもあります。
他のムーミン小説・童話とは、かなり作風・雰囲気の違うストーリー。
核戦争をイメージした作品だと言われれば、何となく納得してしまいそうなぐらい、不安や動揺が伝わってくる内容です。
ムーミン谷の彗星 感想
全体的にテンポが良く、いろんな出来事が次々と起こって行くので、読む方は飽きずに読むことができます。
「あ~、こんな人いるいる!いるよね~!」という、リアルに自分の周りにいそうな個性豊かなキャラクターもたくさん登場するので、誰かを思い浮かべながら、感情移入したり。
彗星が地球に衝突して地球が滅んじゃう!というコトの重大さに反して、、ムーミンたちのマイペースぶりがちょっと面白かったり(笑)
個人的には面白い小説で何度も読んでいます。
でも、ムーミンアニメを知って小説も読んでみようかなとか、ムーミンキャラクターが好きだから原作も読んでみよう!と言う人には、第1冊目としてはあまりオススメしません。
あの、カワイイほんわかしたムーミンをイメージして読んでしまうと、あまりのギャップに小説ムーミンを嫌いになってしまうと困るので(;^ω^)
もし、ムーミン小説デビューをするなら、「たのしいムーミン一家」がおすすめです。
ただ「ムーミン谷の彗星」は、ムーミンシリーズの中でも作家トーベヤンソンのいろんな思いが詰まった作品です。
この記事を読んで、ムーミン谷の彗星に興味が沸いて読んでみようかなと思った人は、ぜひ手に取ってみて下さね。
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